広告クリエイティブの効果はどう評価する?
広告におけるクリエイティブ(テキスト、画像、動画など)の効果測定の流れを大まかに二つに分けると、「広告指標と費用対効果を把握すること」と「データに基づく要因分析すること」に分けられます。
まず広告指標と費用対効果の把握から見ていきましょう。広告の目的(認知・誘導・獲得)によって求める広告効果は異なり、チェックするべき指標は広告の目的や施策によって変化します。
【目次】
- 広告指標と費用対効果の把握
- 1.広告指標を把握する
- 2. 費用対効果を把握する
- データに基づく要因分析
- 広告施策単位の要因分析
- 広告施策ごとの要因分析
- CTRだけで評価するのは正しいか?
- まとめ:広告の目的に合わせた指標を
広告指標と費用対効果の把握
1.広告指標を把握する
・認知(インプレッション効果)のチェックポイント
ブランドや商品サービスの認知拡大を目的とする場合は、インプレッション・インプレッション単価を中心に広告効果を把握します。表示された広告がユーザーに見られたか、広告を見てユーザーが内容を理解したかを確認します。
代表的な広告指標:
- インプレッション(Impression):広告が表示された回数
- フリークエンシー(Frequency):ユーザーに何回広告が表示されたか示す値
- リーチ(Reach):配信した広告に1回以上接触した人の比率
- インプレッション単価(Cost Per Mile):広告表示1000回当たりの単価
CPM =(広告費÷インプレッション数)×1000
・誘導(トラフィック効果)のチェックポイント
ランディングページへの誘導を目的とする場合は、クリック数、クリック率、クリック単価を中心に広告効果を把握し、バナーが期待どおりにクリックされ、ターゲットユーザーを誘導できているか確認します。
代表的な広告指標:
- クリック数(Click):広告がクリックされた回数
- クリック率(Click Through Rate):広告の表示回数に対してクリックされた比率
- CTR =(クリック数÷インプレッション数)×100(%)
- クリック単価(Cost Per Click):広告1クリック当たりの広告単価
- CPC = 広告費÷クリック数
数値が低ければ低単価で効率的にサイトへ誘導ができているといえます。
・獲得(レスポンス・CV効果)のチェックポイント
商品購入やメルマガ会員登録などを目的とする場合は、コンバージョン数、コンバージョン率、顧客1人当たり、または注文1件当たりの獲得コストなどを中心に広告効果を確認しましょう。ランディングページに誘導した後、コンバージョンにつながっているか、獲得効率が目標値の範囲か確認します。
代表的な広告指標:
- コンバージョン数(Conversion):広告を経由して資料請求・会員登録・商品購入などの獲得成果に至った件数
- コンバージョン率(Conversion Rate):広告を経由してサイトを訪れたユーザーの内、獲得成果に至った件数の比率
- CVR = コンバージョン数÷クリック数×100(%)
- 顧客獲得単価(Cost Per Acquisition)またはオーダー獲得単価(Cost Per Order)
- CPA = 広告費÷獲得成果件数
- CPO = 広告費÷注文件数
1コンバージョン当たりの広告単価を示し、広告費をコンバージョン数で割った値。CPAまたはCPOが低ければ一般的に投資効果が高いといえます。
2. 費用対効果を把握する
広告指標が把握できたら、次に広告費用対効果や投資収益率などの費用対効果を確認します。
代表的な広告指標
- 広告費用対効果(ROAS : Return On Advertising Spend)
投資した広告費に対して得られた売上金額の割合を示す。ROASが高ければ広告が効果的に売上に寄与しているといえます。また、媒体やクリエイティブの違いなどによる広告効果の違いを実際の売上に基づいて比較できます。- ROAS = 売上金額÷広告費×100(%)
- 投資収益率(ROI : Return On Investment)
投資したコストに対して生み出した利益の割合。広告費に対する広告効果の良し悪しを判断するには、数・率・単価の視点から広告指標を見て、数値の高低や異常値などを確認します。- ROI = 利益額÷投資した費用×100(%)
データに基づく要因分析
先ほどの手順で得たデータをもとに要因を分析して特定します。広告データの中で数値が大きく変動している部分に注目しましょう。その際に重要な視点は、広告施策単位の要因分析と詳細別の要因分析でデータを見ていくことです。
広告施策単位の要因分析
リスティング広告やディスプレイ広告など広告施策ごとに要因の特定を行います。
要因分析で見るべきポイントは以下の二つです。
- 媒体やキャンペーンなどの広告施策別に目標KPIと実際の広告指標、広告費などの広告指標を比較する
- 平均値を見る場合は、個々の広告ごとに成果が極端に良い/悪いものがないかを見る
広告施策ごとの要因分析
広告施策の全体像をつかんだあとは、個別の広告施策ごとに要因を分析します。ここではリスティング広告のクリエイティブ分析とディスプレイ広告のクリエイティブ分析について説明します。
1.リスティング広告のクリエイティブ分析(広告文)
・広告文を誘導(CTR)と獲得(CVR)の視点で分析
リスティング広告のクリエイティブ分析では、広告文を誘導(CTR)と獲得(CVR)の視点から分析します。
広告効果を上げるにはユーザーが知りたい情報と広告文の一致、さらに広告文をクリックした後に誘導されるLPとの親和性が重要です。
ユーザーが検索するワードに対して、表示された広告文や広告のリンク先ページとの関連性が高いと判断されると広告品質スコア(検索されたワードに対して表示される広告文やリンク先ページの品質は、クリック率やキーワードと広告文との関連性などにより10段階で評価)を上げることができます。広告品質スコアが高いほど、安い入札単価で上位に広告を掲載できます。
・競合分析およびUSP分析を行う
同じ入札キーワードに対して、競合他社がどのような広告文を掲載しているかを確認します。広告表現のポイントとなる自社のセールスポイントを見極めて、広告文を改善しましょう。
2.ディスプレイ広告のクリエイティブ分析(画像・動画バナー)
・バナーを誘導(CTR)と獲得(CVR)の視点で分析
バナーの効果検証も、リスティング広告のクリエイティブ分析同様にCTRとCVRを確認しましょう。さらにバナーのレスポンス状況を把握するために、CTVR(CTR×CVR)も確認します。ユーザーに対して適切な広告訴求ができているかを確認することが重要です。
また、バナー検証にはCVRなどによる比較検証だけでなくA/Bテストなどによる統計学的手法も用いられます。
・バナーのフリークエンシーを適切に設定する
ターゲットユーザー1人当たりに対するバナーのフリークエンシーを適切に設定しましょう。コンバージョンに至るまでに広告が表示されている回数を確認し、フリークエンシーキャップを設定することでリーチの拡大やCTR改善に繋がります。
CTRだけで評価するのは正しいか?
よくクリエイティブ分析をするというと、CTR(クリック率)だけを見て良し悪しを判断するケースがあります。実際何を根拠に判断すれば良いのか分からなくなったりした経験はないでしょうか?
・CTRは出稿ボリュームに影響される
CTRは広告出稿額が少なければ高くなったり、逆に増えれば下がったりする傾向があります。そして、最終的にはある一定の範囲内に収束します。ですので、一時的なCTRを見るのではなく、一定量の出稿額(クリック数)がある前提で比較する必要があります。
・CTRが高い = CVRが高いとは限らない
CTRが高いからといって、その後のCVRが高いとは限りません。特にクリック誘導を目的とするような表現の場合、クリックはされるけれどもコンバージョンに繋がらないケースもあります。また、フリークエンシーが高くなったクリエイティブなどは、CTRが高い状態でも、ある時から急にCVRが悪化するといったケースもあります。
・クリック数、広告費用が高いものは効果が良いということ
多くの広告プラットフォームでは、効果の良いクリエイティブを自動的に判断して露出を増やすようにロジックが組まれています。そのため、クリック数や広告出稿額が多いということは、結果的に効果が良いクリエイティブであると媒体に判断されているとも言えます。
・最終的には ROAS/ROI で判断したい
広告媒体側では多くの場合CPCやCPAまでしか分からず、コンバージョンされた後の売り上げや継続率までは追えません。理想的なのは、売り上げや継続率に寄与しているクリエイティブを見つけ出し、そういったクリエイティブを前面に押し出すことです。そのためには、広告媒体側のデータと売り上げデータをマッチングする必要があります。
まとめ:広告の目的に合わせた指標を
ひとことでクリエイティブを評価するといっても広告の目的(認知・誘導・獲得)ごとに様々な指標が存在します。それらを目的に応じて使い分け、上手にクリエイティブの効果検証を行いながら、最適な広告運用に活かしましょう。